積層型3Dプリンタで作ったサイコロを転がしてみる2/2

3Dプリンタで3種類の点字サイコロを作ったので、それぞれどれくらい公平(ランダムに1~6の目が出る)か調べてみる。(左からSLA光造形(素材はアクリル)、SLS粉末焼結(素材はナイロン)、FDM熱溶解積層(PLA))

前記事で紹介した、下記3Dプリント製サイコロについての記事に、公平性の確認方法も掲載されていたので日本語にして掲載する。

サイコロのバランスを確認する方法

  • 100回転がしてバランスを見る
  • 塩水に浮かべて回り方を見る
  • 統計検定(カイ二乗検定)で確認する

1つ目「100回転がしてバランスをみる」は微妙な方法で、なぜなら全ての目がぴったり100/6である16.6666…回出るわけがない。そのためどれくらいその理想的回数からずれても「問題ない」と言えるのかはわからないからだ。

2つ目の「塩水に浮かべて回り方をみる」方法も下記の通りやってみたのが、よほど偏りのあるサイコロでない限りは確認が難しい。(容器が小さすぎたのも問題な気がするが、いずれにせよ客観的に判断する方法がない)

ということで、3つ目の「カイ二乗検定」で統計的に有意に期待値(1/6)からずれていると言えそうなのかを確認するのが一番よさそう。

カイ二乗検定の詳しいことは下記のブログを参照した。ブログではPythonを使って解説しているが、私はRを使った。

下記論文も参考にした。

http://izumi-math.jp/Y_Hirata/102_hirata.pdf

この画像の背景にあるように、正の字を書きながら1つのサイコロにつき200回弱振った。

その結果がこちら。

この実験結果についてRでカイ二乗検定を行い、サイコロの目が期待値通り(公平である)といえるか確認する。p値が0.05よりも大きい場合、サイコロは公正だといえそう。逆にp値が0.05よりも小さい場合、サイコロは公正とは言えなくなる。

SLAのサイコロの結果は

p-value=0.41と、サイコロが公正であるといえそうだ。

同様にSLSはp=0.27、FDMもp=0.56と、サイコロは3つとも公正と言えそうだとわかった。

この結果は意外で、FDMで積み上げていった決して美しいとは言えないサイコロでもサイコロとしての機能を果たしているとわかった。

今回はInfillを100%で設定したおかげで、中身の重さのバランスがよかったのかもしれない。大きさがかなり大きいのも、バランスが崩れない原因だったかもしれない。

下記Infillの設定によって、サイコロのバランスがどう変わるか実験している先人もいるため、今後はフィラメントを効率よく使うために、infillを20%くらいに下げたものでも実験してみる予定。サイズも現在は23mmと少し大きめなので、どれくらい小さくしても点字が読めそうかについても検証してみたい。

Testing 3D printed dice fairness – Chi-Square Data

https://joesmakerbot.blogspot.com/2013/10/testing-3d-printed-dice-fairness-chi.html

ちなみに点字は万国共通ではないため、今回のように海外の点字だと本来は日本語とは異なるはずなのだが、数字の点字は世界共通らしいので、サイコロは海外製でも同じように数字が正しく読めるのだ。

参考情報:点字の数字について https://nagoya-lighthouse.jp/mather/brail/suji.html

参考情報:Infill100%で設定したFDMサイコロの印刷時間は50分、使用フィラメント3m。これをInfill10%に下げると35分、1.5mになる。使用プリンタはAdventurer3。


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