触覚を使ったゲームを3Dプリンタで作る-1/4(発想〜データ完成)

思いつきはメロンから

千疋屋日本橋本店で購入したメロン vs 近所のスーパーのメロン

あなたはスーパーの1000円のメロンと、千疋屋の16000円のメロンを触って識別することができるだろうか? 高級なメロンの条件(の一つ)は、しまの網が均一で細かいこと。贈答品として使われることも多いので、見た目の美しさが大事らしい。

これまでレーザーカッターや素材の切り貼りを利用して、触ってあそぶボードゲームを作ってきた。しかし、これらの方法で作られるものの触り心地には限界がある。

一番最近に作ったのは、触覚かるたのWOOD版(レーザーカッター使用)

もう少し生産的な方法で、新しいテクスチャを作れないか。そんなことを考えていた時「メロンのしましまを触り比べるゲームはどうだろう」ということを思いついた。(最終的にこの方法が生産的だったかはともかく)

メロンの表面がスキャンできたら、イチゴや他の果物、それから野菜や地面など、世界中にある面白い触り心地のものをゲームにできるかもしれない。3Dスキャナーと3Dプリンタで、新たな道が開ける。3Dプリンタでゲームを作ることができたら、ある程度の数を頒布できるし、彫刻だけではできなかった表現もできそうだ。

現実世界とゲームをリンクさせたい

以前から、単に模様で触り心地を作るのではなく現実世界の「元ネタ」があるような触覚を使いたいと思っていた。「この触覚は、実はいつも触っているものなのだ」と知った時に、普段の生活の中で触っていたものの見方やそれらへの意識が変わるかもしれない。それをあそびで実現したいというのが私のゲーム作りの目標の一つ。

触覚かるたで「つるつる」「ざらざら」を表現する素材として、紙やすりや皮などを使っていた時、触るカードを食品パッケージで使われる素材に絞って作ることも考えていた。納豆の発泡系パックやポテチのアルミパックを触って、その触覚を「ツルツル」「ざらざら」などと表現する。

普段はおそらくほとんど意識したことのない、でも日常的に触っているはずの食品パッケージ。切り取った素材を言葉で表現することで、日常生活の触覚の解像度が上がりそうだ。しかし、触り心地の幅広さがあまりなかったこと、切り取ってカードにする工作作業の難易度の2点がネックで断念した。

その頃から「現実世界のテクスチャの切り取り」は頭の片隅に置いてあった。

SCAN, SCAN, SCAN

メロンの表面をスキャンするには、まず3Dスキャンが必要だ。

3Dプリントもスキャンも一度もやったことがなかったので、設備を貸してくれるところを探した。3Dスキャンはスマホアプリや家庭用のものなどもあるようだったけど、精度が心配だったので業務用のいいやつを使うことにした。

3Dスキャナーは思ったより融通が効かなかった。ちょっとしたスキャン漏れによる穴は後でソフトで繋げるだろうと思っていたら、思うように綺麗には穴を塞げず結局スキャンしなおしたりしながら、1つのオブジェクトに2-3時間をかけていくつもの果物をスキャンした。

後で知るのだが、スキャンに成功したらそれは完全な3Dデータなのだと思っていたらそれは大きな間違いで、目には見えない数万という細かーい穴や交差してしまった面を修正するのにさらにmeshmixerとgeomagic designという二つのソフトを使ってそれらを直さねばならないのだった。

この分野に詳しい人ならもっと効率の良い方法を知っているのだろうが、私はとにかく何もかも初めての素人。行き当たりばったりに、いろんなソフトで試してはうまくいった方法をつぎはぎ方式につなげてなんとか制作を続けた。

まずは手頃な大きさのイチゴから。反射を防ぐための白いスプレーをぬる(右上)。スキャンできたのが嬉しくて、そのまま出力して(左下)染料で青くした(右下)。
メロン以外にも、お菓子やピーナッツ、アボカドなど気になったものを片っ端からスキャンした。

同じ板チョコでも、明治とロッテでは形が全然違う。

ゴーヤ

Rhinocerosでカードにする

スキャンしたものは大きさも形もバラバラなので、そのまま出力すると大まかな形だけでそれが何かわかってしまう。ゲームとしては「表面のテクスチャ」の触り比べに集中させたかったので、全てを平らなカード状に加工する必要があった。

Fusion360というソフトでそれっぽいことができそうだったのだが、「綺麗に」曲面メッシュを平面にするのは限界がありそうだとすぐに気づいた。1つ3D系のソフトを覚えればなんでもできると思っていたが、Fusion360はCADソフトと呼ばれて機械設計のようなカチッとしたものの設計には適しているが、自由曲面を取り扱うのはあまり得意でなようだった。

Fusion360でメッシュを「切断」して四角にできた
Quadメッシュに変換するも効果なし

Fusion360とは対極の、粘土のようにモデルを凹ませたり合体させたりできるMeshmixerというソフトも使っていたのだが、これはこれでフリーハンドすぎてカード状にするのに難があった。

Meshmixerは最後の仕上げで凸凹をならしたりする時に役立った

構想(思いつき)から2ヶ月経過、スキャンまではできたものの、その後のデータ加工をどうしたらいいかわからなくなった。webで調べたそれらしき方法とソフトをいくつか試すが、全部思ったことが達成できる方法ではなかった。

最終的に自分でどうにかできるかも全く見通しがつかない状態で、誰にも頼まれも期待もされていないものを作ろうとしていている。モチベーションが下がる日もあったけど、とにかく自分がそれを触りたい、とにかくそれを作りたい、作れる方法が絶対にあるはず、不思議なやる気でgoogle検索>それっぽい方法を見つけて試す>やっぱりだめを繰り返していた。

そして答えはRhinocerosにあった。

Rhinocerosでメッシュに合わせて手動でサーフェイスを張る
コマンドFlowAlongSrfで、メッシュを曲面サーフェスから平面へフローさせる
コマンドMeshBooleanSplitで、直方体メッシュを果物メッシュで切断

スキャンからカード状にするところまでのmethodが完成したので、あとはもう出力していくだけ。と思っていたが、3Dプリンタはそんなに甘くはないのだった。


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