触覚を使ったゲームを3Dプリンタで作る-3/4(フレームの反り問題)

いろいろスキャン&加工してカードにしてみた(ドリアンや流木など、ここにないものもたくさんある)

カードの印刷素材も決まり、一旦プリントして完成が見えてきた、と思った。1枚のプリントには20-30分時間がかかるので、1セットが18枚の構成だとすると1セット9時間。印刷時間は問題だけど、形になっただけで相当嬉しかった。

しかし、裏側を見てみるとちょっとした印刷のブレがとても目立つ。表面の解像度を上げるために立てて印刷しているので、印刷過程に出力品が揺れることで積層がずれてしまうのだった。

カードをひっくり返して遊ぶ時に、こういった裏面の傷や積層乱れによって表が何なのか識別できてしまう。ゲーム性を担保するためには裏面を、均一な状態で印刷する必要がある。(トランプが一枚だけ折れていたら、いくらシャッフルしてもそれが何かわかってゲームにならないのと同じ)

1枚20-30分かけてプリントしたものが、ほんの少しの乱れによってゲームに使えなくなるのは無駄が多すぎる。フレーム状のものを別に作り、そこへはめこむことで解決しようとした。

出力物上面にできる「しわ」のなぞ

まずは、3Dプリンタで外枠フレームだけを印刷しようと考えた。こちらは横向き(水平)に置いた形で印刷すれば、乱れも少なく印刷できるはず。

しかしまたここでかなりつまずいた。

本来は一番綺麗に印刷できるはずの上面に「しわ」のようなものができるのだ。印刷範囲が140cm×140cmなので、目一杯敷き詰めて9つのフレームを印刷している。ちなみに左下は1枚だけ天地をひっくり返している。中に入っているコの字のギザギザはサポート剤で、外せるようになっている。

下記の画像のように、サポート剤の密度を変えてみたりした(右の方がサポート剤が細かい)が、上面のしわは直らない。サポート剤の他にも、上面積層数や印刷スピード、温度など可能性のありそうなパラメータを変えて印刷したものの、どれもほとんど効果がない。

フィラメントの状態が悪い可能性も考え、新品のいいフィラメント(flashforge社Modera PLA)で試したがしわはさらに増えた(なぜだ)。

こうなったら後処理でなんとかするしかない、とやすりで削ってみることにした。

やすりをかける前(写真だとわかりづらいが半分くらいがしわになっている)
#80で15分程度やすりがけ。しわはほとんど見えなくなった。
#240, #600, #1500とやすりがけを重ねて仕上げる。

残念なことに、今度はやすりの跡が残り、白いムラができてしまった。深いしわはいくら削っても多少残るため、やすりも解決策にはならなかった。

3Dプリンタは、積層を重ねて造形しているので中身が完全にぎゅっと詰まっているわけではない。となるとたとえ削ったとしても、中にちょっとした穴があればそれが表面に出て来てしまう。パテを盛れば良さそうだが、一点もののプラモデルならともかくフレーム1つ1つにパテ盛りまではできそうにない。

往生際が悪いので、ピカールで磨けばなんとかなるか?とやってみた。また、白化した部分をライターで炙ると消えると言う情報も得たのでやってみた。写真の通り、やすりだけよりだいぶマシになったのだがやはりムラが気になる。

やすりがけ後のツルツルは癖になりそうだ

やすりがけはしわの解決策にはならなかったが、思わぬ産物として、やすりがけで触り心地がツルツルで良くなることに気づいてしまった。手間はかかるが、綺麗にやすりがけすることができればゲームの遊び心地改善に大きく貢献できそう。

インターネットで検索しても、上面のしわで悩んでいる人は私の他にはいないようで、原因もわからず模索する日々が続く。

ここで、工作に少し詳しい人にこのシワの問題を相談したところ、シワの原因はおそらく「反り」によるものと判明。通常PLAでは反りはかなり起こりづらいはずなのだが、形状が薄い板状のものを並べているために上面でも反りが起こっている可能性がある。

原因が「反り」となればフレームの形状をもっと厚くするか、印刷をもっと小分けにして狭い範囲で印刷すれば改善するに違いない。

一度に印刷する数を減らして「反り」を解決

早速9つ一度にやっていたのを減らして印刷してみる。

少しずらして3個セット×2列で、6個同時に印刷してみた。しわが無くなった。
3個×2列がうまくいったので調子に乗って、3個×3列にしたら失敗した。

周辺温度を上げてPLAの反りを改善する

ヘッドから高温で出されたフィラメントが、プラットフォーム上で冷えることが反りの原因でもあると聞き、暖房で庫内温度を35度まで上げてみた。

赤外線ヒーターを至近距離で当て続ける。

しわの問題は少し改善したように感じた。でも反りやしわのリスクはゼロにはなっていない。

ムラを消すのではなく、目立たないように初めからムラがあればいいのでは?

3Dプリンタの出力物で傷や乱れを一切無くすことは不可能では?と思い始める。

そういえばトランプって裏面を均一にできているけど、柄はむしろ綺麗な面というよりランダムな柄が描かれている。裏面が無地のトランプは見たことがない。同じ発想で考えると、3Dプリンタでランダムな凸凹を初めからつけておけば磨かなくても裏面が均一に見えるかもしれない。

3Dモデルの時点で細かい凹凸模様をつけて、トランプの裏のように傷が目立たないようにしてみた

とりあえず裏面を均一に見せる、という目的は達成できたかもしれないが、この凸凹の触り心地と見た目が気に入らず、この方法は採用しないことにした。(問題を解決する方法は得たので満足)

3Dプリンタ以外に解決策があるかもしれない

裏面を均一にすることに闘志を燃やしてきたが、板を組み合わせてフレームを作ればいいのでは?と思いつく。板なら表面は初めから均一だ。

四角い板(底)と枠(側面)を貼り合わせてフレームを作る。ぴったり合わせて接着するために地具を利用。
左上:レーザーカッターの焦げが気になったので側面をやすりで削った
右上:箱を作るように、かみあわせて組み立てた
左下:アクリル板
右下:板をCNC切削加工機で削り出した

制作にかかる時間とエラー時間、それから触り心地を人に聞きながら詰めていき、最終的にはMDF板を貼り合わせる方式に決まった。

素材を変えながらいろいろ試した試作品


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です